第2回

「仮面ライダー」をめぐる諸問題

 

経済学部 経営学科 教授 新井範子

 

 日曜の朝が好きだ。日曜が嫌いな人は少ないと思うけど、日曜の朝には特別な楽しみが待っている。朝のテレビの「特撮ヒーロータイム」が待っている。「いい年齢して気持ち悪い」とか「マジ、引くわ~」と言われても、好きなものは好きなのだ。

特に「仮面ライダー」シリーズが好きだ。長く続くロングセラーブランドだけに、世界観がよく練られていて、深く考えさせられるものがすごく多い。特に平成ライダーには、難解なものも多く、「このストーリーを子供たちは理解しているのだろうか?」と疑問に思うことも多く、時として、難解な哲学を読み解いている気分になる。

確かに平成ライダーはストーリーや設定が就学前や小学校低学年の子供たちには、難しい。単純な世界ではないが、ゲーム、魔法使い、フルーツ、電車といったように、子どもが好きそうなモチーフを使って子どもたちの興味をひかせる仕掛けをしている。また、仮面ライダーの放映時間は日曜朝8時だ。日曜の朝ということもあり、父親も在宅しているし、母親も平日より忙しくないと考えると、親が一緒に見ている可能性が高く、そのためにも、親も満足させる必要があり、難解なのかもしれないと考えたりもする。さらに佐藤健、菅田将暉、福士蒼汰など、大活躍するイケメン俳優の登竜門枠となっているのも、一緒に見ていた母親がライダー卒業後もその俳優を支持しているのも関係しているのかもしれない。今年のソフィア祭のゲストだった吉沢亮も仮面ライダー出身で、学内でポスターをみるたびに、「ヨッ!メテオ」(吉沢亮は仮面ライダーメテオだったのだ)と心の中で声をかけていたが、こんなカンジで何となく、「あなたがライダーのころから知っているのよ」と遠縁のオバサン的立場となって、ライダー卒業後もその俳優さんを応援し続けていることも、ライダー俳優が大スターへの道となっていることに影響しているのかもしれない。

さて、子どもへの影響ということでも考えてみる。ヒーローであるライダーは、他のヒーロー同様に、地球を侵略しようとする「敵」から地球を守るために戦う、という姿を通して、勧善懲悪や正義を守る姿を子供たちに教えるという使命があり(たぶん)、子供たちがあこがれるヒーローとなるのだ。

 しかし、子どもたちが、あこがれ、将来なりたいと思うヒーローであるのに、平成ライダーはニート率が高いという指摘がある。放映中の「エグゼイド」は研修医(ゲーマーでもある)なので、職業をもっているが、最近終わった「ゴースト」や「ウィザード」はニートであり、他には実家のカフェ手伝いや引きこもりのバイオリン職人、NPO団体職員なんていうのもあって、多種多様な環境だが、バリバリ働いているという設定は少ない。なんとなく、ゆるやかに生活している。しかし、昭和ライダーはというと、一人を除いて、全員大卒以上であり、研究職も多いというきわめて高学歴だ。これはたぶん、昭和においては、「大学に行く」ということがある種の憧れやステータスであったが、平成になると大学進学率も高く、大学生、大卒というのだけでは魅力的には思えなくなっているという社会的な背景を反映しているのだろう。今や大卒なだけでは、バラ色の未来は待っていないのだ。

 大学の教員である私としても、例えば、学生が講義を休む理由を「敵が出て戦わなくてはならないので、休みます」と申告してきたら、どう対処していいのかと考えてみると、わからない。公欠扱いにはできない気がする。いや、でも、地球は守らなくてはならないから、公欠か?戦っていたという証明書はだれが発行するのか?などと考えてしまうと、仮面ライダーだから講義を休むというのを許可するのも難しい気がする。昭和後期の「大学はレジャーランド」と時代だからこそ、仮面ライダー業と大学生を両立できたのかもしれない。今の大学では無理なような気がする。今の大学は昔と比較すると、一生懸命に勉強しなくてはならないのだ。仮面ライダーをやっている余裕はない。

 仮面ライダーをみながら、誰が2号ライダー、3号ライダーとなっていくのかを予想するのも楽しい。今の仮面ライダーは複数のライダーが登場してきて、絶対的な一人のヒーローはいない構造となっている。これも、日本の中空構造的で、古事記の時代からの日本古来の神々の構造を連想させたりと、哲学的に読み込んでみたりしている。

 他にも、なぜ、危険なことに命を懸け続けられるのか、とライダーの「モチベーション問題」や「給料はだれが払っているのか?実はブラックな仕事か?」問題や、情熱が冷めたり肉体的な限界を迎えたり等で、引退した後の「セカンドキャリア問題」など、いろいろと考えてしまうこともある。

 そうやって、大人の上からの目線で、仮面ライダーを分析し、妄想をふくらませながら楽しむ。ライダーの世界は私のいじわるな分析の上をいく展開で、楽しませてくれる。