第3回

21世紀型インテリジェント電子レンジは便利!その3

電子レンジで植物が早く育つ!?

 

理工学部 物質生命理工学科 准教授 堀越智

 

マイクロ波はエネルギーとしても使える?

 前号では、電子レンジの新しい可能性を書きました。電子レンジはマイクロ波という電波を加熱のためのエネルギーとして利用していますが、最終号では、私の研究室が行っている、マイクロ波を熱や電波以外で利用する研究の中で、最近発見した植物の成長促進効果について紹介します。

 

電子レンジで植物が早く育つ!?  世紀の大発見

 電子レンジで野菜の前処理を行うと、短時間でニンジンやジャガイモが柔らかくすることができ、調理の下ごしらえ(前処理)が簡単にできますよね。私たちは、このマイクロ波前処理を「ひとひねり」することで、植物をものすごく早く育てることができることを発見しました(図1)。植物の種を土に埋め、芽が出たころにマイクロ波を特殊な条件で1時間くらい照射します。このとき、マイクロ波を強くあてると芽が加熱されて死んでしまいます。植物は生き物なのでデリケートなマイクロ波照射が必要です。ちゃんと植物の気持ちを理解して照射してあげないと逆効果になります。

堀越智准教授 上智新聞編集局
図1 通常育成とマイクロ波処理(1時間)育成の違いによる成長速度の促進を比較した写真

 学生諸君も定期試験の時期はストレスがたまるものですよね。もし、ストレスがたまったらどうしますか?買い物や友達と長話をしてストレス発散したりしますよね。一方、植物がストレスを受けると、枯れるか、自分自身が変わるしかありません。植物も生き物なのでストレスを感じますが、これを解消する方法は自分自身が変化して変わるしかありません。強すぎるストレスは植物を枯らすことになりますが、最適な時期に最適な強さのマイクロ波で植物にストレスを与えると、成長促進につながるたわけです。マイクロ波を1時間程度照射した植物は、軽いストレスを感じ、おそらく子孫を残すことを考えます。そのために、植物がもともと持っている遺伝子の働きが促進し、早く花を咲かせ、実や種を付けようとします。このとき、マイクロ波による遺伝子組み換えは進まないので、この植物は食べ物にも利用できます。マイクロ波処理を1時間行えば、年2回しか収穫できない作物が(2耗作)、年4回の収穫(4耗作)につながるかもしれません。

 さらに、この方法の利点は成長速度の促進だけではなく、熱などにも強くなります。40℃以上の高温環境下で育てた植物を図2に示します。マイクロ波処理を行うことで植物が生き生きと育っている様子がわかります。また、高温環境で育成すると、未処理の植物に比べ生存率が1.5倍上がります。地球上で植物を育てることのできる土地は25%と言われていますが、主な原因は気温と水です。水は人工的に調整できる土地も多くありますが、気温を調整するには大きなコストがかかる土地が多いようです。電気製品などとは異なり、植物は非常に単価の高い製品ですので、あまりお金をかけずに育てることが鉄則になります。マイクロ波処理を行えれば砂漠のように気温が高い地域でも植物を育てることができるようになり、人口増加に伴う食糧事情の改善や砂漠の緑地化などの問題を一気に解決できるかもしれません。

堀越智准教授 上智新聞編集局
図2 高温環境下での通常育成とマイクロ波処理(1時間)育成の成長差を比較した写真

 現在、ドローンにマイクロ波を照射する機械を取り付け、「農薬散布」ではなく「マイクロ波散布」を畑で行う実証実験を予定しています。その予備実験で、プランターに植えた植物へマイクロ波を照射する実証実験を2017年の春ごろ4号館付近で行います。もし、4号館付近でドローンが飛んでいたら、この実験だなと思い出してください。

 

最後に

電子レンジは私たちの暮らしになくてはならない調理器具ですが、その用途は食品をおおよそ加熱すること以外使われていません。電子レンジで使われているマイクロ波は携帯電話などの電波などとしても利用されていますが、新たな利用方法は50年以上報告されていません。私たちは、このマイクロ波を化学、生物、エネルギー、環境の分野に熱以外の効果を期待して応用しています。例えば、本号で紹介した植物の研究においても、20169月にTVや新聞で報道されて以来、3か月間で300名以上の問い合わせがありました。学生と共に、予想していなかった反響に驚いています。誰もがしている電子レンジ(マイクロ波)ですが、アイデア次第では新しいイノベーションが広がりそうですね。

新聞記事は研究室ホーム―ページから参照できます

 

おまけ

 全号で紹介したインテリジェント電子レンジを見てみたいという問い合わせが多くありましたので、外観の写真を以下に示します。